フランスで承認されている医薬品の製品概要や患者向けのリーフレットを調べる方法について概説します。
ついでに、薬価や保険償還についての情報も少しだけ解説します。
フランスにおいて、医薬品の承認審査を規制する行政組織はL’Agence nationale de sécurité du médicament et des produits de santé(ANSM)になります。
ウェブサイト全体が当然ながらフランス語で作られているため、フランス語が分かる人でないと見る機会はないかもしれません。
フランスで承認されている医薬品の多くがEMAの中央審査方式で審査され承認されているため、EMAのウェブサイトで情報を見つけることができる医薬品の場合は、EMAのウェブサイトから調べた方が英語で情報が得られるため、多くの日本人にとっては有益なのではないかと思います。
ただ、EMAの中央審査方式で承認された医薬品でなかったり、フランスの規制当局独自に承認されている医薬品もあるため、そのような場合はANSMとHAS(薬価や保険償還を決める機関)と保険者の連合体が共同で運用している以下のウェブサイトから情報を得ることになります。
BASE DE DONNÉES PUBLIQUE DES MÉDICAMENTS
3つの検索窓があります。
上から、製品名、成分名、病名での検索となります。
病名での検索というのは珍しいですが、使用できる病名は決められています。
では、そのような病名が利用可能かというと、上の画面の一番下の切れている部分になるのですが、「Liste des pathologies disponibles」というところを押下することで、利用できる病名リストを見ることができます。
一番上の「Acné」は「にきび」を意味しますが、このように、ここにある病名から、適用のある医薬品を検索することができます。
実際に「Acné」(にきび)で検索してみます。
なお、検索の実行ボタンはなく、Enterを押すことで検索が実行できます。
その結果、79種類の薬剤が見つかりました。
一番上には日本でも販売されているアダパレン(日本での商品名:ディフェリン)が表示されています。
それでは、せっかくなので、このアダパレンを使って、製品概要や患者向け説明文書を見つけることとします。
このように検索結果で表示された薬剤から、より詳しく見たい薬剤を押下します。
今回は、一番上の「ADAPALENE TEVA 0,1 POUR CENT, crème」を押下してみます。
表示された画面の一番上にタブが3つありますが、中央のタブが製品概要、右のタブが患者向け説明文書に移動するボタンとなっています。
EMAの中央審査方式にて承認された薬剤の場合はEMAのウェブサイトにリダイレクトされますが、そうでなければ、以下のようにHTMLで情報を得ることができます。
一つ前の画面(一番右のタブの画面)に戻り、下の方に目を向けてみると、以下のような箇所があります。
ピンク色で囲った場所に、薬価や調剤手数料などの価格に関する情報が載っております。
またその下の「SMR(Service médical rendu)」は、この薬の「医療上の利益」を、さらにその下の「ASMR(Amélioration du service médical rendu)」は「追加的な医療上の利益」を評価した結果が記載されます。
フランスではHAS(haute autorité de santé)という医療技術評価(HTA:Health Technology Assessment)を実施する機関があり、そこが薬剤毎にその薬の医療上の利益(SMR)と追加的な医療上の利益(ASMR)を、それぞれ4段階と5段階で評価しています。
SMRの評価結果により保険償還率が、ASMRの評価結果により薬価が決められてくるのですが、今回は調べた薬剤がジェネリックだったため、その評価結果が掲載されていませんでした。
では、新型コロナ治療薬のレムデシビル(remdesivir)で見てみます。
すると、以下のようにSMRもASMRも評価されていることが分かります(フランス語ですが…)。
以上、フランス編でした。