米CMSがAduhelm™(アデュカヌマブ)の保険償還を制限するとか

医薬関係
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背景

 エーザイとバイオジェンが共同開発し、アメリカではバイオジェンがFDAに申請し、承認を得たアルツハイマー病治療薬のアデュカヌマブ(商品名Aduhelm™、一般名aducanumab)について、アメリカの公的な医療保険を管轄しているCenters for Medicare & Medicaid Services(CMS)は2021/1/11(現地時間)に、その保険の範囲を制限するという発表をしました。具体的には、保険償還を受けるには治験に参加しなければならないというものです。
実際の公表内容は以下となります。

Monoclonal Antibodies Directed Against Amyloid for the Treatment of Alzheimer’s Disease
https://www.cms.gov/medicare-coverage-database/view/ncacal-decision-memo.aspx?proposed=Y&NCAId=305

 ただ、この決定は業界や患者団体などの意見を聞きながら変更される可能性があり、最終決定は4/11を予定しているとのことです。
通常、FDAに承認されたものが、このような制限を受けることはないのですが、FDAのAdvisory Committeeで否定的な意見が多かったのにも関わらず承認されたことについて疑問が呈されたことや、費用対効果についての議論があることが背景にあるのかもしれません。

決定の内容

 気になる今回の決定の内容は以下のようなものです。

A:CMSは、アルツハイマー病(AD)の治療を目的としたFDA承認のアミロイドに対するモノクローナル抗体を、CED(Coverage with Evidence Development)の対象にする。具体的にはセクションCで規定された基準を満たすCMSが承認した無作為化対象試験、およびNIH(National Institutes of Health)が支援する試験(病院での外来の試験)。

CED(Coverage with Evidence Development):
さらなるエビデンスの収集・提示を前提に、一定の条件下で保険の対象とする償還方法の一形態

B:CMSが承認した試験、またはNIHが支援する試験で、プロトコールの一部にβアミロイドPET検査が含まれている場合、これらの試験は、Beta Amyloid Positron Emission Tomography in Dementia and Neurodegenerative Disease NCD (220.6.20)に含まれるCED要件も満たしていると判断され、患者が以前にβアミロイドPET検査を受けていない場合、患者1人につき1回のβアミロイドPET検査は保険の対象となる。

C:CMS承認試験の対象となる適応症および適用基準

1) CMSが承認した無作為化比較試験は、試験が完了し、結果が認知機能において臨床的に意味のある有益性を示した場合、前向きの長期試験に拡大することができる。前向きの長期試験の詳細は、無作為化比較試験と同じプロトコールに記載される必要がある。

2) CMSの承認を得るための全ての研究は、以下の事項がどのように実施されるかをプロトコールに完全に記述する必要がある。

(a)患者の選択・除外基準

選択基準:

  • ADまたは軽度のAD認知症による軽度認知障害(MCI)の臨床診断を受けていること
  • ADに一致するアミロイド病理学的証拠があること

除外基準:

  • 認知機能の低下に大きく寄与する可能性のある神経学的疾患またはその他の医学的疾患(ADを除く)を有していないこと
  • 試験期間中に何らかの原因で死亡が予想されること
  • 重大な有害事象を増加させる可能性のあるAD以外の医学的状態

(b)リサーチクエスチョン

CMSが承認した試験は、少なくとも以下のリサーチクエスチョンを解決するものでなければならない。

  • ADの治療にアミロイドに対するモノクローナル抗体を使用することで、認知機能の低下に統計的に有意で臨床的に意味のある差が生じるか?
  • ADの治療において、アミロイドに直接的に結合するモノクローナル抗体の使用が関連する有害事象がどのようなものか?

(c)試験の要件

(長いので割愛します)

D.国内ではカバーされていない適応症
 AD治療のためのアミロイドに対するモノクローナル抗体は、CMSが承認したランダム化比較試験およびNIHが支援する試験以外では、全国的にカバーされない。

CMSは、社会保障法第1862条(l)(3)(B)に基づき、提案された決定に対するコメントを求めています。

まとめ

 「まとめ」というほどではないですが、アデュカヌマブを利用できる患者さんはだいぶ限られることになりそうです。
 民間保険会社でもアデュカヌマブを保険償還対象としていないところが多いようなので、広く利用されるためには、さらなるエビデンスの強化が求められているように思います。

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