FDAは2022年9月8日に「Submitting Documents Using Real-World Data and Real-World Evidence to FDA for Drug and Biological Products」というガイダンスを公表しました。
結論的には、従来から検討されてきた「RWD/RWEをどのように規制上の決定に利用できるか?」といった感じの内容では無く、「評価資料としてRWD/RWEを利用する場合は、申請時のカバーレターに利用したRWD/RWEについて説明してね」といった、手続き的な話です。
そのため、RWDを利用して医薬品開発を促進したいと考えていたり、規制上での利用におけるポイントを知りたいような「RWDを使って手を動かしている実務者」にはあまり興味を引かないかもしれませんが、申請時には利用したRWD/RWEについて、どのような説明が求められているかを知っておくことは必要だと思います。
なお、付録にあるカバーレターの例は、あくまで例であり、要求されている情報が提供できるのであればどのような形式でも良いとされております。
それでは、以下でガイダンスの内容について見ていきたいと思います。
I. はじめに
リアルワールドデータ(RWD)およびリアルワールドエビデンス(RWE)を含むFDAへの申請資料について、FDA内部での追跡を容易にするため、本ガイダンスでは、スポンサーおよび申請者が申請資料のカバーレターにRWD/RWEの特定の用途を明記することを推奨する。本ガイダンスは、FDAの標準的な審査プロセスの一環として提出されたRWD/RWEのFDAによる実質的な審査については言及しない。
本ガイダンスは、製品の安全性および/または有効性に関する規制上の決定をサポートすることを意図したRWD/RWEを含むIND、NDA、BLAの提出に適用される。
本ガイダンスの目的上、FDAはRWDとRWEを以下のように定義する。
- RWDは、様々な情報源から日常的に収集される患者の健康状態および/または医療の提供に関連するデータである。 例としては以下のようなものがある。
- 電子カルテ(EHR)データ
- 医事請求データ
- 製品または疾病レジストリデータ
- デジタルヘルス技術から得られるデータ
- 質問票など、健康状態を知ることができる他の情報源から収集したデータ
- RWEとは、RWDの解析から得られる医薬品の使用方法や潜在的なベネフィット、リスクに関する臨床的なエビデンスを指す。RWEは、介入研究(臨床試験)または非介入研究(観察研究)を含むが、これに限定されない多くの様々な研究デザインからのRWDにより生成されうる。
一般的に、FDAのガイダンス文書は、法的強制力のある責任を確立するものではない。その代わりに、ガイダンスはトピックに関するFDAの現在の考えを記述しており、特定の規制または法的要件が引用されていない限り、推奨事項としてのみ見なされるべきである。ガイダンスにおける”should”の使用は、何かが提案または推奨されているものの、要求はされていないことを意味している。
II. 背景
RWDの利用可能性とRWEを生成する分析技術の進化により、研究および医学界では、臨床研究の強化と規制当局の意思決定の支援にRWD/RWEを活用することに関心が集まっている。
2016年12月13日に署名された21st Century Cures Act(Cures Act)は、医療製品の開発を加速し、イノベーションを必要とする患者により早く、より効率的に届けることを目的としている。他の条項の中で、Cures Actは、Federal Food, Drug, and Cosmetic Act(FD&C Act)にセクション505Fを追加した(21 U.S.C. 355g)。このセクションに従い、FDAは、規制上の意思決定におけるRWEの利用の可能性を評価するプログラム(RWEプログラム)の枠組みを構築した。
規制当局の決定をサポートするために提出されたRWDおよびRWEの範囲と使用に関するFDAの理解を深めることにより、本ガイダンスに記載されているようにこれらの提出物を内部で追跡することは、FD&C法のセクション505Fに基づくFDAのRWEプログラムにも情報を提供することができる。
III. FDAが追跡できるように意図したRWD/RWEを使用した申請の例
本ガイダンスは、製品の有効性および/または安全性に関する規制上の決定をサポートするためにRWD/RWEに依存するFDAへの提出物に焦点を合わせている。関連する提出物の種類には、IND、BLA、またはNDAに提出される最初のIND申請、ミーティング・リクエスト、試験プロトコール、および最終試験報告書(final study reports)が含まれる場合がある。規制当局への提出物に含まれる可能性のある試験デザインの代表的な例としては、以下が挙げられる。
- 安全性または有効性に関連するクリニカル・アウトカムを把握するためにRWDを使用する無作為化臨床試験
- 外部コントロール群にRWDを使用する単群試験
- 観察的なコホート研究やケース・コントロール研究のような、有効性の補完をサポートすることを目的としたRWEを生成する観察的研究
- postmarketing requirement(PMR)またはpostmarketing commitment(PMC)を満たすためにRWDまたはRWEを使用する臨床試験または観察的研究
本ガイダンスでは、スポンサーおよび申請者が、RWD/RWEを含むデータにより製品のラベリングをサポートすることを意図していない場合、それらの提出物を特定しないことを推奨する。例えば、仮説の生成や臨床試験の計画(例:潜在的な試験参加者の特定)のためにのみRWDを使用した申請、探索的モデリングやシミュレーションにおいてのみRWDを組み込んだ試験、エンドポイントの検証のためにのみRWDを用いた試験、医薬品開発ツール(Drug Development Tool:DDT)の認定プロセスにおいてのみRWDを用いた試験は、このガイダンスにおいてFDAへの申請データを特定しないことが望ましい。
IV. 規制上の申請資料の一部としての RWD/RWE の特定
我々は、スポンサーが製品のラベリングのサポートしているRWD/RWEを含む申請時のカバーレターに以下の具体的な情報を含めることを推奨する。
A. RWD/RWE を使用する目的
以下のように提案している目的、またはRWD/RWEを使用する目的を列挙すること。
- FDAが未承認の製品の安全性および/または有効性のサポート
- FDAが承認した製品のラベル(添付文書)の変更のサポート
- 適応症の追加または変更
- 投与量、投与レジメン、または投与経路の変更
- 新しい患者集団への適用拡大に関する添付文書上の記載の拡大
- 比較研究による有用性に関する情報の追加
- 安全性情報の追加または修正
- その他の表示に関する変更の提案
B. RWEを生成するためのRWDを用いた試験デザイン
以下のような、規制当局の決定を支援するための申請資料の一部としてRWDが利用された臨床試験デザインの特定(これらに限定されない)。
- コントロール群のデータを補完するためのRWDの使用を含め、試験のエンドポイントを収集するためにRWDを利用する無作為化対照試験
- RWDに依存する外部(例:ヒストリカル)コントロール群を用いて分析した単一群試験
- 観察研究
C. RWEの生成に使用したRWDソース
以下のような、RWE を生成するために使用したRWDソースの種類の記載
- 電子カルテデータ
- 医事請求データ
- 製品、疾患、またはその他のレジストリデータ
- 研究環境外にてデジタルヘルス技術から収集されたデータ
- (指定された)健康状態を知ることができるその他のデータソース(例:質問表)
付録:RWD/RWEを含む申請書類に含めるべき情報の提示例
下表は、スポンサーや申請者がFDAに提出するカバーレターにおいて、リアルワールドデータ(RWD)/リアルワールドエビデンス(RWE)を含む申請をどのように識別するかの一例を示したものである。


