ICMRAによるGCP/GMPリモート査察に関する振り返り

医薬関係
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振り返り文書

ICMRAがCOVID-19パンデミック期間中に規制当局が実施したリモートによるGCP/GMP査察について、振り返り文書を公開しています。
Reflections on the regulatory experience of remote approaches to GCP and GMP regulatory oversight during the COVID-19 pandemic

背景

COVID-19の感染による海外渡航制限により、GCPやGMPのための実地調査ができなくなったため、代替的にリモートによる方法がとられましたが、その時の経験を各規制当局が持ち寄り、振り返ったもののようです。
アメリカ、EU(EMA)、カナダ、スイス、アイルランド、スペイン、フランス、ドイツ、日本、オーストラリア、ブラジル、シンガポール、サウジアラビアとWHOという構成国でICMRAの中にworking groupが作られていたということで、厚労省・PMDAもメンバーとして参加していたようです。

概要

基本的には、遠隔による査察は有用であったものの、実地調査を完全に代替することはできないという考え方であり、実際、パンデミックの期間中でも、リモートでは適切な査察を実施できないと考えられた場合には、現地訪問が可能になるまで延期したり、もしくは現地訪問と遠隔によるハイブリッドなアプローチがとられていたようです。
ただ、パンデミック後も補完的手段として有益に利用できる可能性があり、公衆衛生上の緊急事態以外の時に適用できる場面について定義する必要があるとのこと。

気になったこと

パンデミック下での査察ということで、規制当局が考慮していたことで特徴的なものとして、

• 公衆衛生上の緊急事態に対処するために設けられている地域的または国際的な規制
• パンデミック自体に対処する際の負担軽減を含め、検査官、検査機関のスタッフ、査察対象施設のスタッフの健康と安全を守る必要があること

を挙げています。
そしてこの二つが、リモートでの査察が難しくなった主な理由になっていたようです。
この二つは互いに関係しで、例えば現地のデータ保護法に対応するために、データをマスクしたり修正したりする必要が発生するが、ただでさえ混乱しているパンデミック下での医療機関に、そのためのリソースを割いてもらうことができない、といった状況があったようです。
確かに、プライバシーや機密情報の保護への配慮は大きく、文中には”to safeguard privacy and confidentiality”といった趣旨を記した箇所がいくつもありました。

また上記二点は特にGCP査察に対して大きな影響を与えたようで、GCPはリモート査察の適用が困難でだったということで、以下のような記述がありました。

In the area of GCP, remote inspections at investigator sites were often considered unfeasible by some authorities, because it was crucial to avoid any undue additional burden on investigator site staff during the time of the pandemic (e.g. to provide access to appropriate paper-based documentation), and the inspection of source documents may not be possible due to local legal requirements concerning accessibility and data protection. Furthermore, some authorities experienced instances where there was limited access to relevant electronic systems by investigational site staff and/or by inspectors.

5.2 Areas where remote oversight was most challenging when applied in GCP during the pandemic

実際、EUでは治験実施施設におけるリモート査察は実施不可能とされているようですね。
(参考としてGuidance on remote GCP inspections during the COVID19 pandemicが引用されていました)

COVID-19によるパンデミックがきっかけでリモートによる査察をせざるを得ない状況となった訳ですが、この経験をしっかり振り返り、平時での利用も含めて、どのような場面でどのような形であれば適用ができるかを考えようとする姿勢は大事ですね。

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