2023年3月30日にeHealth Network(eHN)におけるPatient Summary に関するガイドラインの最新更新版(Release 3.2)が公開されました。
eHealth Network(eHN)は、EUの加盟国を跨る医療における患者の権利に関する指令(Directive 2011/24/EU of the European Parliament and of the Council of 9 March 2011 on the application of patients’ rights in cross-border healthcare)の第14条に基づく、患者の情報連携のためのネットワークです。
具体的には、加盟国間では国を跨いでも患者の医療情報を共有できるような仕組みを構築しようと活動しようとしてきたもので、そのためのインフラはeHealth Digital Service Infrastructure(eHDSI)と呼ばれているのですが、その別名としてMyHealth@EUというブランドが用いられています。
EHDS(European Health Data Space)に注目している方とすると、「MyHealth@EU」という名称を見ると「なぜ?」と思うかもしれませんが、上記の指令(Directive)に基づき特定の国において構築されつつあった「MyHealth@EU」というネットワークが元々あったということです。
すなわち、eHDSIで稼働しているものが、EHDSにおけるMyHealth@EUの「元」とも「プロトタイプ」とも言えると思います。
指令(Directive)の下で取り組みが始まったeHDSIは現状でも約10か国程度でしか展開されておらず、規制(Regulation)としてのEHDSが構想された理由の一つには、そのインフラ・機能を、より強力に加盟国全体へ展開していくことがあったとされています。
実際、今回公表されたガイドラインの中に、以下の記載があり、eHNのガイドラインがEHDSを含めたEUの各種プロジェクトの指針となりうることが示されています。
Using the Patient Summary guideline as the guiding principle for all kind of EU-projects and implementations (such as registries and research projects) can foster the use of Patient Summary data within the European Health Data Space.
Guideline on the electronic exchange of health data under Cross-Border Directive 2011/24/EU Patient Summary Release 3.2, Mar 2023
この患者サマリーのガイドラインを、あらゆる種類のEUプロジェクトや実装(レジストリや研究プロジェクトなど)の指針として使用することで、欧州ヘルスデータスペースにおける患者サマリーデータの利用を促進することができる。
さて、EHDS規則案では、第5条(一次利用のための個人の電子ヘルスデータの優先カテゴリー)で定められた、(a)患者サマリー、(b)電子処方箋、(c)電子調剤、(d)医療画像、画像報告書、(e)検査結果、(f)退院レポートについては「優先カテゴリー」と呼び、優先的にデータの入力・交換を促す制度となっております。
この(a)から(f)のより細かい説明は、EHDS規則案のAnnex1で説明されており、その内容はこちらに書いていたようなものでした。
電子ヘルスデータのカテゴリー | カテゴリーに含まれる電子ヘルスデータの主な特徴 |
---|---|
1. 患者サマリー | 特定された個人に関連する重要な臨床的事実を含み、その個人に対して安全かつ効率的な医療を提供するために不可欠な電子ヘルスデータ。 以下の情報は、患者要約の一部である。 1. 個人の詳細情報 2. 連絡先 3. 保険に関する情報 4. アレルギー歴 5. メディカルアラート 6. ワクチン/予防投与情報(場合によってはワクチンカードの形で) 7. 現在解決済み、治療された、または観察化にある病状 8. 治療歴に関連するテキスト情報 9. 医療機器・埋込型医療機器 10. 手術歴 11. 機能状態 12. 投薬歴 13. 健康に関連する社会歴 14. 妊娠歴 15. 患者から提供されたデータ 16. 健康状態に関連する観察結果 17. 治療計画 18. 希少疾病の影響や特性に関する情報 |
2. 電子処方箋 | 指令2011/24/EUの第3条(k)に定義される医薬品の処方を構成する電子ヘルスデータ |
3. 電子調剤 | 電子処方箋に基づく薬局による自然人への医薬品の供給に関する情報 |
4. 医療画像、画像レポート | 医学的状態の予防、診断、または治療のために人体を観察するために使用される技術の使用またはそれらによって生成されるものに関連する電子ヘルスデータ |
5. 検査結果 | 臨床生化学、血液学、輸血学、微生物学、免疫学など、特に体外診断で行われた検査の結果を表す電子ヘルスデータ |
6. 退院レポート | 医療機関の受診または治療のエピソードに関連する電子ヘルスデータで、自然人の入院、治療、退院に関する重要な情報を含む |
このうち、特に「患者サマリー」については多くの情報要素が記載されているものの、具体的にどのようなデータが入力されることになるのかイメージしにくかったのですが、eHNのPatient Summaryに関するガイドラインで示されたデータ構造が、EHDS規則案のAnnex1で示された患者サマリーのデータ項目の説明とほぼ一致していることを踏まえると、EHDSにける患者サマリーのデータ項目は、eHNのPatient Summaryに関するガイドラインで規定されたデータ項目を踏襲すると考えるのが妥当ではないかと考えました(あくまで想像です)。
そこで、eHNのPatient Summaryに関するガイドラインを確認することで、将来的に規定されるだろうEHDSの「患者サマリー」のデータ構造をイメージしていきたいと思います。
念押しですが、あくまで「eHNのPatient Summaryに関するガイドライン」の記述(の抜粋)となりますので、誤解の無いようご注意ください。
eHN:Patient Summary データセット
ヘッダー
A.1 患者サマリー ヘッダーのデータ要素
A.1.1 患者・対象の特定
データ要素 | 説明 | 優先的なコードシステム | |
A.1.1.1 | 国のヘルスケアにおける患者ID | 国別のID、その国の患者さんに固有のものです。例:ポルトガルの患者のためのID | |
A.1.1.2 | 名 | 患者の名前(forename、first name)。このフィールドは複数の要素を含むことができる。 | |
A.1.1.3 | 姓 | 患者の姓(family name/surname/last name)。このフィールドは複数の要素を含むことができ、また複数のフィールドが存在することも可能である。 | |
A.1.1.4 | 生年月日 | 患者の生年月日 [ISO TS 22220]。検査結果の値を正しく解釈するためには、患者の年齢が重要となるため、完全な生年月日を提供する必要がある。 | ISO 8601に準拠した、時刻を伴わない完全な日付 |
A.1.1.5 | 性別 | このフィールドには、”行政上の性別 “について認識された有効な値が含まれていなければならない。 異なる場合は、「生理的性別」は別の場所で伝えること。 | HL7 Administrative Gender |
A.1.1.6 | 所属する国名 | 所属する国名 | ISO 3166 |
A.1.2 連絡先情報
A.1.2.1 患者の住所 | |||
A.1.2.1.1 | 通り | 例:Rua dos Campeões | |
A.1.2.1.2 | 番地 | 例:246 | |
A.1.2.1.3 | 市 | 例:Porto | |
A.1.2.1.4 | 郵便番号 | 例:4500 | |
A.1.2.1.5 | 州または県 | 例:Vila Nova de Gaia | |
A.1.2.1.6 | 国名 | 例:PT | ISO 3166 |
A.1.2.1.7 | 電話番号 | 例:+351 20 7025 6161 | |
A.1.2.1.8 | 電子メール | 例:jens@bigsmile.eu |
A.1.2.2 優先的に連絡する医療専門家(health professionals:HP) – このセクションは、例えば、希少疾患の問題(A.2.3.1)と個々の患者のケアを担当する希少疾患専門医(このセクション)の間のリンクのように、患者サマリーにおける任意の特定情報と繰り返しリンクすることができる。 | |||
A.1.2.2.1 | HPの名称 | 患者を治療している、または責任を負っている医療専門家の名前 | |
A.1.2.2.2 | HPの役割 | 医療専門家の役割 | |
A.1.2.2.3 | HPの組織 | 医療専門家の組織 | |
A.1.2.2.4 | 電話番号 | 例:+45 20 7025 6161 | |
A.1.2.2.5 | 電子メール | HP・法人の電子メール | |
A.1.2.2.6 | 所属ネットワーク | HPの組織は、ERNなどのヨーロッパのネットワークに所属している | |
A.1.2.2.7 | 関連性 | この患者サマリーについて、どの医療専門家が優先的なコンタクト先かを特定する項目 |
A.1.2.3 連絡先/法定代理人 | |||
A.1.2.3.1 | その人の役割 | 連絡先の役割:法定代理人、近親者、その他連絡先担当者 | HL7 RoleClass |
A.1.2.3.2 | 関係レベル | 患者との関係性(例:父、妻、娘) | HL7 RoleCode |
A.1.2.3.3 | 名 | 連絡先/保護者の名前(例:Peter)。このフィールドは複数の要素を含むことができる | |
A.1.2.3.4 | 姓 | このフィールドには、複数の要素を含めることができる(例:Español Smith) | |
A.1.2.3.5 | 電話番号 | 例:+45 20 7025 6161 | |
A.1.2.3.6 | 電子メール | 連絡者・法定代理人のEメール |
A.1.3 保険情報
A.1.3.1 | 保険番号 | 例:QQ 12 34 56 A |
A.1.4 ドキュメントデータ
A.1.4.1 | 作成日 | 患者サマリーが生成された日付 | ISO8601 |
A.1.4.2 | 最終更新日 | 患者サマリーがアップデートされた日付(最新バージョンの日付) | ISO8601 |
A.1.4.3 | 患者サマリーの性質 | 生成されたコンテキストを定義する。患者サマリーを生成する方法論として、HPによる人間の直接介入アプローチ、自動生成アプローチ、混合アプローチの3つを区別している |
A.1.5 入力者(Author)と組織
A.1.5.1 | 入力者の組織 | 少なくとも1つの入力者と組織を記載する。入力者がいない場合は、少なくとも1つの組織を記載しなければならない。 入力者は、患者サマリーに記載されたデータの出所に関する詳細な情報を提供することができるはずである。 それぞれのセクションや入力項目に貢献した異なる入力者を、関連するレベルで提供することができる。 | |
A.1.5.2 | 法定認証機関 | 患者サマリーを認証した法人(医療専門家または医療提供者) |
A.1.6 追加情報 / ナレッジリソース
A.1.6.1 | 外部参照 | 臨床プラクティスガイドライン(CPG)、救急・麻酔ガイドライン、またはその他の臨床関連ガイドラインにつながる参考資料。これは、患者をケアする医療専門家が容易に入手できない可能性のある特定のガイダンスを提供する場合にのみ使用される | |
A.1.6.2 | 関連性 | 例えば、希少疾患の存在(A.2.3.1 )とその希少疾患のガイドライン(本項目)との関連など、この追加情報が関連する患者サマリーの他の項目またはエントリーを識別する |
ボディー(本体)
A.2 患者サマリー ボディーのデータ要素
A.2.1 アラート
データ要素 | 説明 | 優先的なコードシステム | |
A.2.1.1 アレルギー | |||
A.2.1.1.1 | アレルギーの説明 | アレルギーまたは不耐症についてのテキストによる説明 | |
A.2.1.1.3 | アレルギーのタイプ | アレルギー、非アレルギー性不耐性、または不明なクラスの不耐性(アレルギーまたは不耐性であることが判明していない)のいずれの状態かを記述 | SNOMED CT GPS |
A.2.1.1.3 | アレルギーの症状 | アレルギー反応の臨床症状についての記述。例:アナフィラキシーショック、血管浮腫(臨床症状は、観察された反応の重症度に関する情報も与える) | SNOMED CT GPS |
A.2.1.1.4 | 重症度 | アレルギー反応の臨床症状についての重症度 | SNOMED CT GPS |
A.2.1.1.5 | 致命性 | 副作用を引き起こすことが知られている物質に暴露した場合、その後に生命を脅かすような副作用が起こる潜在的リスク | SNOMED CT GPS |
A.2.1.1.6 | 発症日 | アレルギー反応が観察日された日 | ISO8601 |
A.2.1.1.7 | 終了日 | アレルギーの消失日(例:医師が症状を追跡する必要がなくなったと判断した時) | ISO8601 |
A.2.1.1.8 | 状態 | アレルギーや不耐性の現在の状態、例えば、活動中か、寛解しているか、解消しているか、など | SNOMED CT GPS |
A.2.1.1.9 | 確実性 | 特定された物質に対する反応の傾向、または潜在的なリスクに関連する確実性についてのアサーション。 診断上・臨床上のエビデンスとなる状態。 | SNOMED CT GPS |
A.2.1.1.10 | 物質名またはアレルゲン | 患者が有害反応傾向を持つ特定のアレルゲンまたはその他の薬剤/物質(薬剤、食品、化学物質など)。 | SNOMED CT GPS (非薬物アレルギーの場合)またはATC*(薬物アレルギーの場合) (IDMPがある場合は、IDMP) |
A.2.1.2 メディカルアラート情報(アレルギーに含まれないその他のアラート情報) | |||
A.2.1.2.1 | ヘルスケアアラートの説明 | メディカルアラートの説明(テキスト形式):患者の生命や健康が脅かされないよう把握しておくことが必須である臨床情報 例1:消化管出血によるアスピリンへの不耐性。 例2:咳を理由としたカプトプリルへの不耐性(アレルギーではないが、咳が続くため耐えられない) 例3:特別な治療が必要な希少疾病への罹患 例4:気道確保/挿管困難 例5:悪性高熱症、ポルフィリン症、出血性疾患などの診断、抗凝固剤、免疫抑制剤などの特殊な治療、植込み機器など 例6:医療連絡で考慮されなければならない移植された臓器に関するその他の情報 例7:医療連絡で考慮されなければならない臨床試験への参加 |
A.2.2 病歴
A.2.2.1 ワクチン接種/予防投与の情報 | |||
A.2.2.1.1 | 対象となる疾患や病原体 | ワクチン接種によって予防される疾患または病原体 | ICD-10* SNOMED CT GPS |
A.2.2.1.2 | ワクチン・予防接種 | ワクチン/予防投与またはその成分に関する一般的な説明 | SNOMED CT GPS ATC*(利用可能な場合はIDMP) |
A.2.2.1.3 | ワクチン製品 | 製品名 | 当面は、その国で登録されている製品名とする。 将来的には、製品に関する情報は、ISO IDMP規格による識別子と医薬品パッケージの固有の識別子により組み込む。 |
A.2.2.1.4 | 販売会社名 | 販売会社名 | EMAのOrganisations System data(SPOR) |
A.2.2.1.5 | 一連の接種における接種回数 | ワクチン接種コースでの順序 (補足:2回接種のうちの1回目、など) | |
A.2.2.1.6 | バッチ/ロット番号 | バッチを特定するための特徴的な数字や文字の組み合わせ | |
A.2.2.1.7 | ワクチン接種日 | ワクチン接種日 | ISO8601 |
A.2.2.1.8 | 接種センター | 接種センターまたはワクチン接種イベントを担当する保健当局の名前/コード | |
A.2.2.1.9 | 医療専門家の識別子 | ワクチンまたは予防投与の投与に責任を持つ人の名前または医療専門家コード | |
A.2.2.1.10 | ワクチン接種の国名 | 予防接種を受けた国名 | ISO 3166 |
A.2.2.1.11 | 次回のワクチン接種日 | 接種予定日/再接種予定日(次回接種など) | ISO8601 |
A.2.2.2 解決済み、クローズ済み、またはアクティブでない問題 | |||
A.2.2.2.1 | 問題の内容 | 患者が過去に受けた問題または診断のうち、解決済み、クローズ済み、またはアクティブでないことを宣言したもの(「現在の問題または診断」には含まれない) 例:肝嚢胞(肝嚢胞摘出術により問題を解決したため、問題はクローズしている) | ICD-10* SNOMED CT GPS Orphacode(希少疾病の場合) |
A.2.2.2.2 | 発生日 | 問題の発生日 | ISO8601 |
A.2.2.2.3 | 終了日 | 問題の解決日 | ISO8601 |
A.2.2.2.4 | 解決状況 | 問題のステータスが現在から非アクティブに変化した理由を記述(例:外科的処置、医療行為など)。このフィールドには、解決状況が外科的処置、医療機器などの他のフィールドにまだ含まれていない場合、「フリーテキスト」が含まれる。例えば、肝嚢切除術(これは問題「肝嚢胞」の解決状況となり、外科的処置に含まれることになる)。 |
A.2.2.3 病歴 | |||
A.2.2.3.1 | 病歴 | このセクションには、総合的な既往歴(例えば、病態の局面をクラスター化した臨床情報を時系列にまとめた記述)と、臨床医が患者から収集し、物語形式で読み取ることができる事例ベースのエビデンスの両方が記載される場合がある。 |
A.2.3 医学的問題
A.2.3.1 現在の問題 | |||
A.2.3.1.1 | 問題/診断の説明 | 患者の健康に影響を与え、医療専門家にとって健康面談の際に知っておくことが重要となるる健康状態 | ICD-10* SNOMED CT GPS Orphacode(希少疾病の場合) |
A.2.3.1.2 | 問題発生日 | 問題発生日 | ISO8601 |
A.2.3.1.3 | 診断アサーション状況 | 診断に関連する確実性についてのアサーション。病態の診断や臨床的エビデンス | HL7 |
A.2.3.2 医療機器・埋込型医療機器 | |||
A.2.3.2.1 | デバイス・埋込機器の説明 | 患者の健康状態に影響する植込型および外付けの医療機器やデバイスについての説明(心臓ペースメーカー、埋込型細動器、補装具、強磁性骨インプラントなど、医療専門家が知っておく必要があるデバイスを含む) | SNOMED CT GPS* EMDN |
A.2.3.2.2 | デバイスID | 規則(EU) 2017/745に従ったUDIなど、デバイスインスタンスの標準化された識別子 | |
A.2.3.2.3 | 埋込日 | 手術が行われた日 | ISO8601 |
A.2.3.2.4 | 終了日 | 患者からデバイスが抜去された日、または外部デバイスが使用されなくなった日、同様にデバイスの抜去が予定されている日 | ISO8601 |
A.2.3.3 手術・処置 | |||
A.2.3.3.1 | 手術・処置の説明 | 手術・処置の種類の説明 | SNOMED CT GPS* |
A.2.3.3.2 | 本体サイト | 手術・処置がされた体の部位 | SNOMED CT GPS* |
A.2.3.3.3 | 手術・処置日 | 手術・処置が行われた日 | ISO8601 |
A.2.3.4 機能状態 | |||
A.2.3.4.1 | 説明 | 患者が第三者によって継続的に評価される必要性。機能状態は、治療の計画や実施に関する決定に影響を与えうる。 | |
A.2.3.4.2 | 開始日 | 機能状態の開始日 | ISO8601 |
A.2.3.4.3 | 機能評価の説明 | 機能評価の内容 | ICF |
A.2.3.4.4 | 機能評価日 | 機能評価の実施日 | ISO8601 |
A.2.3.4.5 | 機能評価結果 | 機能評価の結果値 | ICF |
A.2.4 投薬の概要
A.2.4.1 現在の投薬と、それに関連する過去の投薬 (調剤の有無にかかわらず、治療指示期間が経過していない処方薬や、現在の健康状態に影響を与える薬、臨床的決定に関連する薬などを含む) | |||
A.2.4.1.1 | 投薬の理由 | 医薬品が処方された、または使用した理由。 患者が過去に経験した、または現在抱えている健康状態や問題との関連性を示す。 | ICD-10* SNOMED CT GPS Orphacode(希少疾病の場合) |
A.2.4.1.2 | 使用目的 | 使用理由:予防または治療 例:予防、治療、診断、麻酔、機器の手入れ | |
A.2.4.1.3 | 商品名 | 生物学的製剤の場合、または医療専門家が正当化する場合、商品名(参照:指令2012/52/EU) | |
A.2.4.1.4 | 有効成分リスト | 単独で、または1つ以上の他の成分との組み合わせで、医薬品の意図する活性をもたらす物質 例:” paracetamol” | ATC* (IDMP identifier、利用可能な場合) |
A.2.4.1.5 | 投与量 | 医薬品の投与形態に応じて、投与単位当たり、単位体積当たり、または単位重量当たりで定量的に表される有効成分の含有量をいう。例1錠あたり500mg | UCUM、EDQM Standard Terms |
A.2.4.1.6 | 薬剤の剤形 | 医薬品の包装に記載されている医薬品の形態(錠剤、シロップなど)。 | EDQM Standard Terms |
A.2.4.1.7 | 用法・用量 | 1回の投与量と一定期間の投与頻度の単位数。 例:24時間ごとに1錠、10日間 | |
A.2.4.1.8 | 投与経路 | 医薬品が体内に摂取、または接触する経路 | EDQM Standard Terms |
A.2.4.1.9 | 投与開始日 | 患者が処方された医薬品の服用開始日 | ISO8601 |
A.2.5 社会歴
A.2.5.1 | 健康に関連する社会歴的観察 | 健康に関連する生活習慣の要因、または生活習慣の観察と健康の社会的決定要因。例:喫煙者、アルコール消費 | SNOMED CT GPS |
A.2.5.2 | 参照日の範囲 | 例:1974年から2004年まで |
A.2.6 妊娠歴
A.2.6.1 現在の妊娠の状態 | |||
A.2.6.1.1 | 観察日 | 妊娠状態の観察が行われた日 | ISO8601 |
A.2.6.1.2 | 状態 | 観察が行われた日の女性の現在の状態。例:妊娠中、妊娠していない、不明 | SNOMED CT GPS |
A.2.6.1.3 | 出産予定日 | 出産予定日 | ISO8601 |
A.2.6.2 過去の妊娠歴 | |||
A.2.6.2.1 | 過去の妊娠の状況 | 女性の過去の妊娠に関する情報: 妊娠したことがある 妊娠したことがない 不明 | SNOMED CT GPS |
A.2.6.2.2 過去の妊娠の説明 | |||
A.2.6.2.2.1 | 結果日 | 前回の妊娠の結果に関係する日 | ISO8601 |
A.2.6.2.2.2 | 結果 | 過去の妊娠の結果 | SNOMED CT GPS |
A.2.6.2.2.3 | 子どもの数 | この妊娠における子供/胎児の数 |
A.2.7 患者から提供されたデータ
A.2.7.1 旅行歴 | |||
A.2.7.1.1 | 国名 | 訪問した国 | ISO 3166 |
A.2.7.1.2 | 期間 | 入国・出国日 | ISO8601 |
A.2.7.2 事前指示書 | |||
A.2.7.2.1 | 文書 | リビングウィルに関する文書の存在 | SNOMED CT GPS |
A.2.8 結果
A.2.8.1 観察結果 (ケア対象者の健康状態に係る観察結果のうち、今後の治療に影響を及ぼす可能性のあるものの一覧)。 | |||
A.2.8.1.1 | 日付 | 観測日時 | ISO8601 |
A.2.8.1.2 | 観察の種類 | 観察結果の種類は、測定結果、臨床検査結果、解剖学的病理学的結果、放射線学的結果、その他の画像または臨床結果がありうる。 例:診断結果(血液型、臨床検査所見、画像診断結果など) 身体所見(バイタルサイン) | HL7 ObservationCategoryCodes |
A.2.8.1.3 | 結果の記述 | 観察結果や所見の記述 | |
A.2.8.1.4 | 観測の内容 | 観察を識別するコード、観察された身体構造または検体の仕様、検体採取の日時などの観察内容 | LOINC SNOMED CT GPS NPU |
A.2.8.1.5 | 観察結果 | 観察の結果の数値やコード化された結果、結果値を得るための検査方法の詳細、基準値に関する情報、結果の解釈を含む観察結果。観測結果の内容は、観測の種類によって異なる。 | SNOMED CT GPS (順序または名目尺度の結果に対して) UCUM (単位用) |
A.2.8.1.6 | 実行者 | 患者サマリー文書全体の情報源に由来しない結果データの情報源について、発信者/入力者を特定し、出所情報を提供する人 | |
A.2.8.1.7 | 報告者 | 特定の観測結果に関する報告者(結果を解釈した人や検証を担当した人である場合もある) |
A.2.9 治療計画 (食事療法、運動療法、計画的な手術など、薬物療法以外の治療上の推奨事項)
A.2.9.1 | 治療計画 | 患者の状態をモニターし、トラッキングし、または改善するための提案、目標、および命令要請を含む計画の記述。 将来的には、このセクションは構造化されコード化されたフォーマットで提供されることが期待される。 |
以上、eHNのPatient Summaryに関するガイドラインで規定されたデータ項目を見てきました。
全てのデータ項目が必須で入力される訳ではないでしょうが、予想以上に情報が豊富だと感じました。